4月18日開花
ミツバツツジ
満開のサクラの濃密で豊潤な風景が終わっていく時
それは祭の後の静けさにも似たもの悲しさを想うものである
春の移ろいはここで一旦の足踏みをするように
新緑までの時間をとぼとぼと進む
山々はまだ冬枯れの淡いブラウン色
ミツバツツジはそんな里山にぼんぼりのように咲く
山々が燃える緑に様変わりする間
ピンク紫のぼんぼりとなって人を誘うように咲くのだ
俺は想う
ミツバツツジは人の心に寄り添って咲いてくれる花なのだ
お前こそは人間の故郷の花だという称号を与えたい
けれど人間はお前を乱暴に扱うんだよな
里山にやさしく咲き山深い林道に道標のように咲きぼんぼりのように
人に寄り添ってくれているのに無残に雑木のように
草刈り機で切られたお前の姿をよく見る
俺はそれが悔しくてこの樹林にお前を集めてきた
俺の中でお前はサクラよりも価値が上だからな
ギフチョウも小鳥たちも名も知らぬ小さな昆虫も
お前の元に集まり戯れている
俺はいつもここに本当の春を見ているのだ
生命力が強く安定感があって
必ず同じ姿を見せて裏切らない花
そんなお前に毎年ぼんやりとした安堵の時間を与えられている
そしてお前は人のようにその花色の個体差を見ている
実は一株だけ異常に色濃い黒紫のミツバツツジがある
あのキクザキイチゲの濃紺を春の修羅と名付けたように
この樹林にもミツバツツジの春の修羅がいるのだ
いかにお前が素晴らしいかを
俺は知ってる、知ってる。