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【おはよう その17 ミツバツツジ】

4月18日開花

飛騨高山の里山に左官の挾土 秀平ハサドシュウヘイがSDGsを考えて作った里山に咲く山野草ミツバツツジ
飛騨高山の里山に左官の挾土 秀平ハサドシュウヘイがSDGsを考えて作った里山に咲く山野草ミツバツツジ

ミツバツツジ

 

満開のサクラの濃密で豊潤な風景が終わっていく時

それは祭の後の静けさにも似たもの悲しさを想うものである

春の移ろいはここで一旦の足踏みをするように

新緑までの時間をとぼとぼと進む

山々はまだ冬枯れの淡いブラウン色

ミツバツツジはそんな里山にぼんぼりのように咲く

山々が燃える緑に様変わりする間

ピンク紫のぼんぼりとなって人を誘うように咲くのだ

 

俺は想う

ミツバツツジは人の心に寄り添って咲いてくれる花なのだ

お前こそは人間の故郷の花だという称号を与えたい

けれど人間はお前を乱暴に扱うんだよな

里山にやさしく咲き山深い林道に道標のように咲きぼんぼりのように

人に寄り添ってくれているのに無残に雑木のように

草刈り機で切られたお前の姿をよく見る

俺はそれが悔しくてこの樹林にお前を集めてきた

俺の中でお前はサクラよりも価値が上だからな

 

ギフチョウも小鳥たちも名も知らぬ小さな昆虫も

お前の元に集まり戯れている

俺はいつもここに本当の春を見ているのだ

生命力が強く安定感があって

必ず同じ姿を見せて裏切らない花

そんなお前に毎年ぼんやりとした安堵の時間を与えられている

そしてお前は人のようにその花色の個体差を見ている

 

実は一株だけ異常に色濃い黒紫のミツバツツジがある

あのキクザキイチゲの濃紺を春の修羅と名付けたように

この樹林にもミツバツツジの春の修羅がいるのだ

いかにお前が素晴らしいかを

 

俺は知ってる、知ってる。